【2019年版】超厳選、初心者を本格ミステリーフリークにする30冊!!
- 本格ミステリーとは
- チャートの見方
- 超厳選本格ミステリー小説30選!!
- おわりに
みなさんはミステリー小説で、本気で犯人を当てようと思ったことはありませんか?
小説ではないにしても、月9ドラマやアニメなどで、 おそらく誰もが1度くらいは挑戦したことがあるかと思います。
でもあんなのほぼ無理ですよね。
無論、これはあなたの推理力が足りないのではありません。だいたいのミステリー作品はそもそも謎がきれいに解けるようにはできていないからです。
例えば名探偵コナンの作者である青山剛昌先生は、コナンのジャンルを「殺人ラブコメ」などと言っています(笑)
構造的に、謎の答えがきちんと1つに絞れる作品でなければ、真に謎を解くことはできません。
ではそういう作品を見分けるにはどうすればいいのでしょうか。
本格ミステリーとは
じゃあ本格ミステリで調べれば必ず謎解きが楽しめる小説に出会えるのかというと、残念ながらそうなってはいません。
というのも、 「本格」という紛らわしい呼称のために「本格的なミステリーってことかな〜」という風なぼんやりした知識でまとめられた記事がごろごろあるからです。 私も何度騙されたことか・・・。
そこで今回は、ガチで謎解きを楽しみたい、でもどれを選んでいいかわからない、という初心者の方へ、のびさくが今まで読んできた本格ミステリーを厳選してズラズラっと紹介していこうと思います!!
チャートの見方
- 公平性・・・実際に解くことのできる問題か。答えをみて、確かに謎を解くための材料は揃ってたな〜と納得できるか。
- シンプルさ・・・話の構造を複雑にしすぎたり、登場人物を増やしすぎたりして、本質的でない部分で謎解きの難易度をあげていないか。
- 衝撃度・・・伏せられていた事実や、謎の答えが明かされた時に、どれだけ衝撃をうけるか。
- ゾクゾク感・・・衝撃度の「ええええーーーー!!!!」に対して、「えっ」「ひっ」という感じ。
- ドラマ性・・・恋愛要素や感動、ドロドロした人間関係、メッセージ性など、謎解き要素以外のエンタメ要素。謎解きの動機付けに繋がっていれば最高。
- 読み口の軽さ・・・文章が今風かどうか。格式張ったり古めかしい文章でないか。まあこれは好みの問題。(軽い文章の本格は正当に評価されにくい傾向がある気がするのであえて)
超厳選本格ミステリー小説30選!!
これが本格だ!! 問答無用でまず読んでほしい10冊!!
そして誰もいなくなった - アガサ・クリスティー
例えるなら、携帯電話が普及し始めたときにいきなりスマホを発表する感じでしょうか。時代を先取りしすぎてるんですよね。一部では、ミステリーでできることはクリスティがもう全てやったと言われるほど。
昔の作品にも関わらず、堅苦しさなどは全くなく、なんなら下手なラノベよりキャッチーで抜群に読みやすいのもポイント。
ただ一つだけ欠点をあげるとすれば、邦題がよくない。この作品は先の展開への先入観を全く持たずに読む方が絶対におもしろいのに、タイトルで大事な結末のひとつを言ってしまうとは勿体ないにもほどがあります!! 間違いなくこの作品の本来の衝撃度を下げています。
友達に勧めるときは、題名や作者名の部分は破るか黒マジックで塗りつぶすかして、何の本かわからないようにして貸してあげるとよいでしょう。
一生感謝されます。
十角館の殺人 - 綾辻行人
占星術殺人事件 - 島田荘司
アクロイド殺し - アガサ・クリスティー
屍人荘の殺人 - 今村昌弘
リラ荘殺人事件 - 鮎川哲也
ギリシャ棺の謎 - エラリー・クイーン
月光ゲーム - 有栖川有栖
-
フーダニット(Who done it? 誰が殺したか)
-
ワイダニット(Why done it? なぜ殺したか)
-
ハウダニット(How done it? どうやって殺したか)
という3つの要素があるのですが、有栖川有栖さんの作品は特にフーダニットが意識されているように感じます。
殺人者はこの中にいるのに、だれかは全くわからない。次は誰がいつ殺されるのか。あの人には死んでほしくない。
そういうゾクゾク感を味わいたければこの作品の右に出るものはありません。
この作品は「江神二郎シリーズ」の第1作にあたるのですが、面白ければ、ぜひシリーズ3作目「双頭の悪魔」までは騙されたと思って読んでみてください。
密閉教室 - 法月綸太郎
三つの棺 - ジョン・ディクスン・カー
「われわれは探偵小説の中にいる・・・」
少し説明しますが、これは「オペラ座の怪人」と同じ著者の作品で、私は創元推理文庫で読んだ時にいくつかのトリックの部分で「なんだそれ?」と思ったので本格ミステリーとしては強くは勧めませんが、探偵同士の対決、法廷での論戦など、エンタメ部分は熱い展開があって普通に楽しめました。
最近ハヤカワから新訳版が出たので読みやすさも問題ないと思います。
これが密室の原点。
騙されたと思って読んでほしい、ライトな文章で目立っていないが超絶本格な10冊
神様ゲーム - 麻耶雄嵩
続編もあります。「神様ゲーム」の後であれば、ぜひ読んでくださいみたいなことは言わなくても読みたくなっているはずです。
珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を - 岡崎琢磨
体育館の殺人 - 青崎有吾
- 第一章は事件とともに始まる
- 第二章において探偵役が登場する
- 第三章は容疑者絞りに費やされる
- 第四章の末尾で全てのヒントが出そろう
- 幕間 || 読者への挑戦
- 第五章は解決編である
興奮してくるでしょう。
わたしも最初開いてみて、「おおおおーーーー!!!! きたーーーー!!!!」と歓喜したのを覚えています。
内容もラノベチックな文章とは裏腹に、ひとつの手がかりから展開される論理的推理は必読です。これぞ本格。
アニメネタも出てくるので普通に世代の方ならニヤニヤできます。
「読者への挑戦」ゆえに、「平成のクイーン」と評されていますが、本物のクイーンの作品は後ほど。
恋と禁忌の述語論理 - 井上真偽
『クロック城』殺人事件 - 北村猛邦
臨床真実士ユイカの論理 文渡家の一族 - 古野まほろ
最近Twitterで炎上しちゃった作家さんですが(笑)、作品自体に罪はありません。非常に切れ味の良い論理展開で気持ちのいい本格です。
主人公は「言葉のウソとホントを見抜ける」という特殊な能力を持っているのですが、その設定がミステリーと非常に相性がいい。というより、ウソかホントかわかるだけなのが非常に丁度いいんですよね。「あれ? これならちょっと計算すれば解けるんじゃない?」と期待しちゃうんですがそう簡単にはいかないという、理想的な塩梅です。
謎解き部分も詳しくは言えませんが驚きに次ぐ驚きで、ドラマ性もあり、非常に読み応えがあります。
数学好き、論理好きな方はハマること間違いなし。
眼球堂の殺人 ~The Book~ - 周木律
数学と建築と本格ミステリーへの愛が詰まった作品。ただし数学と言っても哲学的な内容に止まっているので(次作からは止まっていません)、数学アレルギーの方も問題なく楽しめると思います。
密室、クローズドサークルでそそられますし、やはり館ものはトリックが壮大でいいですね。発想を大きく飛び越えてくる感じがたまりません(間をすり抜けてくる感じも好きですが)。
で、ラストがめっぽう面白い。詳しく書けないのが辛いところです。
すベてがFになる - 森博嗣
この作品は何と言ってもセリフ一つ一つが奥深いのが味です。と書くと、「本格ミステリーの紹介なのに文学的要素褒めてどうすんだよ!」とお思いになるかもしれませんが、もちろんそれだけでは終わりません。単なる文学作品の表現の多義性とは意味が違ってくるんです。
というのも、推理においてセリフのひとつひとつのセリフの本当の意味というのは、そのまま謎をとく手がかりになりうるからです。例えばこちらのセリフ。
「ほら、7だけが孤独でしょう?」真加田女史が言った。「私の人格の中で、両親を殺す動機を持っているのは、私、真加田四季だけなの。ですから、私の肉体が両親を殺したのなら、私が覚えていないはずはない。私だけが、7なのよ......。それにBとDもそうね」
意味深ですよね。
- ミステリーという形式が必然的に手がかりを見逃さまいと注意深く読ませる
- するとその副産物として森博嗣さんの印象的な文章の深さを存分に味わえる
という構造になっており、奥深い言葉と謎解きが理想的に融和してるんですよね。
もちろん、ミステリー部分も非常に繊細かつ大胆で高クオリティ。推理せずに表面的な部分だけをさらっても楽しめますが、ぜひ本気で推理して、深い部分まで楽しんで欲しいと思います(私が書いたみたいな偉そうな言い方になってすみません 笑)。
浜村渚の計算ノート 3と1/2さつめ ふえるま島の最終定理 - 青柳碧人
ラノベですが、読者への挑戦付きの正真正銘本格作品。シリーズものなのですが、番外編という感じなので今作だけ読んでも全く問題ないかと。
数学好きが集まる奇妙なホテルで起きた事件の話で、フェルマーの定理と言う難題をテーマに、シンプルできれいな本格ミステリーに仕上げているのがすばらしいです。解説もわかりやすい。
作中で張られた伏線が一つの形になっていく過程は読み応えがあり、本格に対する作者の意気込みが感じられます。
他にもシリーズを通して、四色問題や、ポアンカレ予想、モンティ・ホール問題といった割とマニアックな数学の豆知識を得られながらライトなミステリーを味わえます。
興味を持たれたらぜひ!!
氷菓 - 米澤穂信
少し前にアニメになったりしてすっかり有名になりました。今もっとも売れていると言っても過言ではない米澤穂信さんも、昔はライトなミステリーも書いていたんですね。
この作品に関しては「氷菓」にはじまる<古典部シリーズ>全体をオススメしたいです。
ホームズのような古典から、新本格の綾辻行人さんまで、様々な名作ミステリのパロディが仕込まれていて、、初心者の方が知りたい情報がわかりやすい形で詰まってるんですよね。ミステリーの見本市といった感じでしょうか。基本はここで学べます。
しかしただそれだけで終わるのではなく、解釈が難しい一石が投じられがちで、ネットで議論になることもしばしば。
アニメでふわふわしたイメージをお持ちの方は多いかもしれませんが、意外とシリアスで大人な作品です。それがクセになります。
シリーズの中でも2作目の「愚者のエンドロール」は必読!
- 作者: 米澤穂信,高野音彦,清水厚
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2002/07/31
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謎解きの良さがわかってきたら読んでほしい、まぎれもない名作10冊
グリーン家殺人事件 - ヴァン・ダイン
推理小説の元祖はエドガー・アラン・ポーですが、本格ミステリーの祖はヴァン・ダインだと言われています。もちろん少し前から本格と言えなくもない作品もあったのですが、彼が区別を明確にしたという感じです。
ヴァンダインの打ち立てた、推理小説を書く上での規則『ヴァン・ダインの二十則』をしご紹介しましょう。
- 事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。
- 作中の人物が仕掛けるトリック以外に、作者が読者をペテンにかけるような記述をしてはいけない。
- 不必要なラブロマンスを付け加えて知的な物語の展開を混乱させてはいけない。ミステリーの課題は、あくまで犯人を正義の庭に引き出す事であり、恋に悩む男女を結婚の祭壇に導くことではない。
- 探偵自身、あるいは捜査員の一人が突然犯人に急変してはいけない。これは恥知らずのペテンである。
- 論理的な推理によって犯人を決定しなければならない。偶然や暗合、動機のない自供によって事件を解決してはいけない。
- 探偵小説には、必ず探偵役が登場して、その人物の捜査と一貫した推理によって事件を解決しなければならない。
- 長編小説には死体が絶対に必要である。殺人より軽い犯罪では読者の興味を持続できない。
- 占いや心霊術、読心術などで犯罪の真相を告げてはならない。
- 探偵役は一人が望ましい。ひとつの事件に複数の探偵が協力し合って解決するのは推理の脈絡を分断するばかりでなく、読者に対して公平を欠く。それはまるで読者をリレーチームと競争させるようなものである。
- 犯人は物語の中で重要な役を演ずる人物でなくてはならない。最後の章でひょっこり登場した人物に罪を着せるのは、その作者の無能を告白するようなものである。
- 端役の使用人等を犯人にするのは安易な解決策である。その程度の人物が犯す犯罪ならわざわざ本に書くほどの事はない。
- いくつ殺人事件があっても、真の犯人は一人でなければならない。但し端役の共犯者がいてもよい。
- 冒険小説やスパイ小説なら構わないが、探偵小説では秘密結社やマフィアなどの組織に属する人物を犯人にしてはいけない。彼らは非合法な組織の保護を受けられるのでアンフェアである。
- 殺人の方法と、それを探偵する手段は合理的で、しかも科学的であること。空想科学的であってはいけない。例えば毒殺の場合なら、未知の毒物を使ってはいけない。
- 事件の真相を説く手がかりは、最後の章で探偵が犯人を指摘する前に、作者がスポーツマンシップと誠実さをもって、全て読者に提示しておかなければならない。
- 余計な情景描写や、脇道に逸れた文学的な饒舌は省くべきである。
- プロの犯罪者を犯人にするのは避けること。それらは警察が日ごろ取り扱う仕事である。真に魅力ある犯罪はアマチュアによって行われる。
- 事件の結末を事故死や自殺で片付けてはいけない。こんな竜頭蛇尾は読者をペテンにかけるものだ。
- 犯罪の動機は個人的なものが良い。国際的な陰謀や政治的な動機はスパイ小説に属する。
- 自尊心(プライド)のある作家なら、次のような手法は避けるべきである。これらは既に使い古された陳腐なものである。
- 犯行現場に残されたタバコの吸殻と、容疑者が吸っているタバコを比べて犯人を決める方法
- インチキな降霊術で犯人を脅して自供させる
- 指紋の偽造トリック
- 替え玉によるアリバイ工作
- 番犬が吠えなかったので犯人はその犬に馴染みのあるものだったとわかる
- 双子の替え玉トリック
- 皮下注射や即死する毒薬の使用
- 警官が踏み込んだ後での密室殺人
- 言葉の連想テストで犯人を指摘すること
- 土壇場で探偵があっさり暗号を解読して、事件の謎を解く方法
15. の「スポーツマンシップ」なんて言葉からも、ヴァンダインが推理小説を純粋なゲームと捉えているのが伝わってきますね。
これ以降、どれほどのミステリー作家がこの『ヴァン・ダインの二十則』に影響を受けたことでしょうか。
そんな彼の代表作がこの「グリーン家殺人事件」でして、館モノの古典です。フェアなのはもちろんのこと、館に住む一家の狂った雰囲気にゾクゾクし、天才探偵「ファイロ・ヴァンス」の頼もしさにしがみつくたくなりました。
スリルとサスペンス性が非常に優れた作品です。
なお、次作「僧正殺人事件」も、今作と一、二を争う名作ですのでぜひ。
Yの悲劇 - エラリ・クイーン(バーナビー・ロス)
ヴァンダインの影響をもろに受けているのがこの作品です。
世界最高のミステリー作品候補の筆頭にあるのがこの作品。
古今東西の本格を志す数多の作家が、この作品のパロディーに挑戦していますので、読んでいれば様々なミステリー作品を深く楽しむことができるようになります。
なおこの作品は「ドルリー・レーン悲劇四部作」に2作目にあたるのですが、ぜひ全部に目を通してみてはいかがでしょうか。1作目「Xの悲劇」も最高峰の作品です。
- 作者: エラリー・クイーン,越前敏弥
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/01/24
- メディア: 文庫
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本陣殺人事件 - 横溝正史
日本家屋は鍵がちゃんとかからないので日本で密室ミステリーを作るのは難しいのではといわれていたのですが、この作品が初めてやってのけました。
金田一耕助の初登場作。といっても、もう知らない方も多いでしょうか。
「金田一少年の事件簿」ってあるじゃないですか。
一ちゃんがよく口にするこの「じっちゃん」こそ、横溝正史の小説で活躍する名探偵、金田一耕助なんです。
江戸川乱歩の影響でおどろおどろしい設定が流行っていた当時にして、非常に美しい描写の目立つ作品です。
漫画、ドラマもあります。
刺青殺人事件 - 高木彬光
金田一耕助、明智小五郎とならび、「日本三大探偵」と称されるのは、高木彬光が生み出した名探偵、神津恭介です。
「神津の前に神津なく、神津の後に神津なし」と評される、イケメン天才探偵。
この作品も密室を扱っているのですが、作品後半に登場したかと思うと、彼が登場してスッと解いてしまいます。かっこいいんですよこれが。
謎も完全にフェアですし、ゾクゾク感と納得感では「本陣殺人事件」に全く負けていません。
これが日本の本格。
11枚のトランプ - 泡坂妻夫
泡坂妻夫さんは、紋章上絵師、プロマジシャン、ミステリー作家という多彩も多彩な方でして、本そのものが手品になってたりするんですね。そんなミステリーは泡坂妻夫さんにしか書けません。
この作品も例に漏れず、自身のプロマジシャンの性質を存分に発揮されている傑作です。というのも本書そのものが手品的です。
まず、本書「11枚のトランプ」が、そのまま作中作としてⅡ部に登場します。Ⅱ部全体がそのまま短編集になっていまして、ひとつひとつのクオリティが非常に高い。
で、それをはらんだ本書全体が、かっちりした関係性で1つの大きなトリックを形作っているわけです。
謎の贅沢さでこの本に敵う作品は、今後も出ることはないでしょう。
泡坂妻夫さんはこの他にも、本自体にユニークな仕掛けがある作品があり、その斬新なアイデアは、たとえ思いついたとしても実現不可能だろうと思ってしまうものばかりで、知らずにいるのは人生の損失です。
本格マジシャンが本格ミステリーを書くとどうなるのか? その答えがここにあります。
どちらかが彼女を殺した - 東野圭吾
本格ものをあまり書かなくなった東野圭吾さんですが、それでも以前執筆された本格ものはことごとくおもしろいです。非常に安定感がある作家さんのように思います。
そんな中、めずらしく賛否が分かれているのがこの作品。推理好きと推理嫌いで分かれているのは言わずもがなです。
この作品の特殊なところは、ずばり終わり方です。これが推理嫌いな人は納得がいかないようでして。
逆にいうと、推理の面白さを見出している方にとってはアドレナリンが吹き出る演出です。もちろん謎はちゃんと解けるように書かれています。
巻末はなんと袋とじになっているので(ミステリー小説ではちょいちょいあることですが)せっかくなら新品をお買い求めください!
毒入りチョコレート殺人事件 - アントニイ・バークリー
この作品の歴史的に偉大な点は「多重解決」という手法を最初に提示したことです。新製品のチョコレートをある夫婦が試食し、夫は一命を取り留めますが、妻は死亡します。しかし、そのチョコレートはもともと別の人物に送られたものでした。
警察は愉快犯の無差別攻撃として捜査を切り上げてしまうのですが、アマチュア探偵が集まる秘密クラブ「犯罪研究会」のメンバー6名が、それぞれ独自の推理を展開していきます。
おもしろいのが、その6人全員キャラクターが立っていて、大変ユーモラスなんですね。おもしろそうでしょう。おもしろいです。
この形式はある意味ミステリー界へ革命を起こしました。この作品以降、数多のミステリー作家が、この作品の手法をベースにして作品を執筆しています。
最近だとパッと思いつくだけでも、青柳碧人さんの「浜村渚の計算ノート」、米澤穂信さんの「古典部シリーズ」に使用されていました。そういう作品を見つけた時、この作品を読んでいれば、この一言が言えるようになります。
「ああ、これは『毒入りチョコレート』だね(ドヤ」
樽 - F・W・クロフツ
「やけにパラメータが低くない?」 「厳選したんじゃねーのかよ!」という声が聞こえてきそうですが、もちろんわけがあるんですね。
著者のF.W.クロフツは、カーやクイーン、クリスティと同じく、黄金時代を代表する作家のひとりです。
その代表作がこの作品なのですが、どうも退屈という声が多いんですね。
しかしはっきりいって、そういう方はこの本の楽しみ方を間違えていると言わざるをえません。ぶっちゃけ本格は公平性が高けりゃいいんです。余計なエンタメ要素など邪魔というものです。
かの江戸川乱歩は彼の作風を「リアリズム小説の最高峰」とたたえました。登場人物の性格や心理、恋愛などの要素に煩わされることなく、純粋な謎解きを楽しむにはこれ以上の作家はいません。
もしこの本を読んで「おもしろい!!」と感じたあなたは、すでにまぎれもない「本格ミステリーフリーク」です。
火刑法廷 - ジョン・ディクスン・カー
カーの最高傑作と名高い作品です。密室が3つ登場し、そのどれもがハイクオリティ。さまざまな怪奇現象を見事本格ミステリに落とし込んでいます。
ただの事件ではなく、実は本当に怪奇現象なのでは? という演出が、ゾクゾク感を刺激して、謎を解きたい欲求を駆り立ててきます。
この作品に関しては、先入観を持たずに読んで欲しすぎてもう何を書いていいかわからないのです。とにかくチャートを信じて読んでみてください。
そして最後の最後まで、あきらめずに推理してみてください。
隻眼の少女 - 麻耶雄嵩
探偵Pは証拠A、証拠B、証拠Cという三つの証拠をもとに結論Xを導き出したとします。しかし、真実は証拠Cは犯人がわざと残した「偽の手がかかり」でした。ということは探偵が論理的にたどり着いた結論は間違えだった、ということになります。
つまり、この場合だと証拠Cは犯人が残した「偽の手がかかり」であるということを証明する証拠C´が必要となります。しかし、証拠C´の存在すら探偵はわからない。ましてや、証拠C´も犯人が残した「偽の手がかかり」だと証明する証拠C´´が存在するかもしれない…、また別の証拠Dが…、C´´´が…。こうやって、際限なく推理の元になるデータが増える可能性をいくらでも含んでいるわけです。
これを防ぐためには探偵に「現在保有しているデータ」が「真相を導き出す推理に必要な全てのデータ」である、という情報を提供しなければなりません。読者に対しては、それは基本的に「読者への挑戦状」という形で行われます。それに対して、探偵にそれを示す方法は…ありません。従って、探偵は論理的に唯一無二の真相にたどり着くことができない、という壊滅的な結論に達します。これが俗に言われる「後期クイーン問題」です。
おわりに
ずらずらと並べましたが、興味のある作品はありましたでしょうか。
むやみに紹介しすぎても混乱を招くかと思い、今回は30冊に留めましたが、涙を飲んでここに入れなかった作品は何冊もあります。
この記事が好評でしたら、また別のジャンルでおもしろいミステリー作品を紹介してみたいと思っています。ご質問、ご感想ぜひお寄せください。
長々と失礼しました。最後までありがとうございます。